不祥事

「ニッポン人は、当人の裁量範囲外のことで責任を取ったり、取らせたりするのが好きだね。こんな連帯責任制度は、アメリカにはないよ」

高校野球不祥事をアメリカンに解説すると、こんな言葉が返ってきた。

今年の甲子園大会は、開会直前に明るみに出た部員の暴力によって、代表に決まっていた高校の出場が取り消された。大会主催者は、選手間の暴力とその報告の遅延に隠蔽の意図ありとみて、厳しい断を下した。甲子園出場を夢見てきた部員は、この世の不条理と無情を体験した。

大会終了を待ちかねたように、優勝チームの野球部長が2ヶ月まえに選手に加えた暴力行為が、表沙汰になった。「父兄からの要請によって、今日まで不祥事の発表を延期した」と、テレビ会見で言い訳する校長は、まるで遠山の金さんの前に引き出された悪徳商人の姿だった。優勝の取り消しを避けるためなら、隠蔽、責任転嫁、その他何でもいたします、という卑屈さが見られる。正義を規範の礎とする教育者の誇りは見えない。

「選手の気持ちを思えば、出場取り消しは忍び難いので、自分の一存で隠し通してきた。全責任を取って校長を辞職するから、選手は責めないでくれ」といえば男を上げたのに、その器量はない。

学校側と暴行を受けた選手の父兄の間でシャンシャンと手打ちが行われ、「暴行は部長の仕業、選手は不関与、隠蔽はお咎めなし、優勝の取り消しもなし」という予想通りの筋書きで決着した。

「ハナシを聞いていると、大会主催者は『みんな良い子にしていろよ、さもなければ、連帯責任だぞ』という脅しに、高校野球の教育的意義があると考えているようだ。だが、どの学校にも悪い子がいるのが現実だ。脅しは、現実の偽装、隠蔽、虚偽申告を、かえって奨励するのではないか?」

このアメリカンは、ニッポン文化の矛盾を熟知している。

(出典: デイリースポーツ)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です