ガン治療はこれでいいのか?

「大学病院でガンと診断されたのですが、手術は2ヶ月先になるとドクターにいわれました。センセ、大丈夫でしょうか?」

ニッポンからの電話は声が上ずっている。大丈夫ではないが、相手の切羽詰った気持を思うと駄目だとは言えない。医者がガンと診断しながら、治療は2ヶ月先だと、よく平然と言うものだ。最近、ニッポンの病院を訪れてみると、そこここの壁に「われわれは患者様のためにベストを尽くします」という理念を掛けている。現状は有言不実行なのではないか。この理念を本気で貫く気持があるなら、診断と治療の間隔を縮める努力をなぜしない。

わがアイオワ大学病院では、毎年3600人の新しいガン患者を治療する。すべての患者は院内の「ガン治療センター」で登録し、ガン治療専門医の診察をうける。それがガン治療のはじまりだ。手術が必要な場合には、その日のうちに外科を受診、数日以内に手術を受ける。手術と前後しガン治療専門医の主導による化学療法や放射線治療が始められる。このシステムの導入のウラには、万人が納得するワケがある。

患者が病院を訪れるのは検査を受けるためではない。1日も早くガンの治療をうけて長生きするためだ。ならば治療を最優先するのが道理ではないか。外科、内科、放射線科など複数科が関与するガン治療では、指揮者を欠くと、船頭多くして、舟、山に登ってしまう。だからガン治療専門医に指揮をとらせたらよい。これらを勘案し、患者にとって最善を探索した結果が、院内「ガン治療センター」なのだ。

「ガンの手術をするのは外科医だから、化学療法も放射線療法も外科医が主導して当然だ」という議論がニッポンにはある。これは医療先進国では30年以上も前の議論だ。
「患者にとって最善の治療とはなにか」という基点で考えれば、ガン治療の問題はおのずと解決する。

(出典: デイリースポーツ)

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