キダさん、禁煙してますか?

ニッポンのホテルで一夜明かすと、翌朝ノドの異常に気づく。いがらっぽい咳とともに茶色の痰がでる。「禁煙の部屋を頼んだ筈だけど」とフロントに抗議してみる。セントラル冷暖房だから、喫煙、禁煙両フロアの空気は混じり合って循環するが、構造上分別循環はできないと謝られた。「それなら全館禁煙にしたらいかが?」というと、宿泊客の3人に2人は煙草を好むから、それは営業上出来ない相談だという。

煙草は身体に悪いのだ。アメリカ各州は、不特定多数の人が出入りする建物は、公私に関わらず、全館禁煙と法律で定めている。勿論、ホテルは全館禁煙だ。スモーカーは屋外に出て吸うしかないが、屋外喫煙も禁止する運動が進行中だ。ホテルの中庭で、ひっそりと煙草を吸う人たちの姿を見ると、何十年も前に禁煙したときのエピソードが思い出される。

まだ神戸にいた頃、大阪朝日放送の「フレッシュ9時半キダタロー」というトーク番組のゲストに招かれた。ホストのキダさんのリードで会話は軽やかに弾む。コマーシャルのあと、キダさんがいきなり「センセは、煙草を吸う人間をどう思います?」と突っ込んできた。打ち合わせにもない質問に、「喫煙は人類が開発した最も愚劣な習慣だと思います」と、とっさに答えたのを想い出す。

ふと気づくと、ガラス窓の向こうのモニタールームで、女性ディレクターがスパスパと旨そうに煙草をふかしている。キダさんは、なぜか彼女を憤怒の形相で睨みつけているのだ。そのワケは、次のコマーシャルブレイクで判明した。

当日、キダさんは禁煙2ヶ月、わたしは禁煙2週間目。勿論、オンエアはしなかったが、二人とも、禁煙の決意が緩んでくる時期にあった。これ見よがしに紫煙をくゆらせる女性ディレクターを見て、キダさんもわたしも、禁断症状が大爆発したというワケだ。

キダさん、いまも禁煙してますか?

(出典: デイリースポーツ)

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