プリンシプルを欠くニッポン

先日米国の「世界で最も嫌われている男は誰か?」という世論調査の第一位はブッシュ大統領だった。同じ調査で「世界一のヒーロー」に選ばれたのもブッシュ大統領だった。「世界最悪の男」と「世界の英雄」。自国民から背反する評価を受けたブッシュ大統領は、泥沼にはまり込んだイラク戦争の出口が見つからず苦しんでいる。苦しまぎれに兵士2万人の増派を決めたが議会は猛反発。識者もメディアもそろって遅すぎた愚かな決断とこき下ろした。

そもそも今度の戦争は、イラクが原爆や細菌化学兵器など大量破壊兵器を密かに蓄積しているという情報をもとに、ブッシュ大統領が「世界平和を乱すサダムの邪悪な企てを阻止するのは正義なり」とイラク侵攻を命じて始まった。サダムは囚われ報復裁判により生命を失った。大量破壊兵器の情報は虚偽と判明した。開戦以来4年が過ぎ、米軍兵士3千人の生命が失われた。それでも戦争は終わらない。いまや米軍駐留の理由は「独裁政治の再台頭を押さえイラクに民主国家を確立する」という大義名分に替えられた。プリンシプルのないイラク戦争は、いまやイスラム各宗派間の内戦状態となり、米軍は撤退の時期を失ったままだ。

永年共和党の熱狂的支持者である友人も「愚かな指導者により方向を間違えたアメリカは、いま史上最悪の時代だ」と言い切る。それほど不人気でも領排斥運動が起きない理由を糾すと、大統領の間違いには、選んだ国民に責任があるからだと言いながら、「民主主義は忍耐ですよ」と苦笑する。

ふとニッポンを眺めると、小泉前首相が生命を賭けた郵政民営化に反対し放逐された謀反者が選挙の都合で復党を許されたという。何事もプリンシプルはさておき都合が先立つのがニッポンだ。だが、あまり国民をバカにすると、7月にしっぺ返しを喰らうかも。

(出典: デイリースポーツ)

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