宿泊代分割アラジャポネ

去年、学会の講演に招かれ日本に滞在中、某自治体病院から講演依頼があり承諾した。病院の担当者に家人同伴の旅なので宿はツインの予約を頼むと快い返事だった。当日、講演のあとの席では懐かしい旧友に再会し、20年間のつもる話に花が咲いた。

翌朝出発時、ホテルのフロントの係りから「お連れ様の分のルームチャージをお支払い願ます」と請求されびっくり仰天した。理由を糾すと部屋代のうち招聘したわたしの分は病院が支払うが、あとの半分は家人の分だからわたしが支払うのがスジだと病院から連絡があったという。公務に無関係な人間の費用をもつ必要はないというのが役所の理屈だ。だがこの小役人的発想は大局的にみるとニッポンのためにならない。

これまで世界各地80の大学や病院から手術や講演の招きを受け家人を同伴したが、部屋代の半分を支払わされたのは今度のニッポンが初めてだ。それで思い出すのは10年前のこと。ニッポンの某国立大学は米国某教授に監査を依頼した。他施設幹部に監査を依頼するのは米国大学では日常的だが、当時の国立大学としては画期的だった。夫人を伴って訪日した米人教授は監査の任務中滞在したホテルをチェックアウトする段になって、今回のわたしの場合同様、宿泊代の半分の支払い請求をうけ激憤した。二度とニッポンには来ないと決心し帰国の旅についたという。

激憤を招いたのは宿泊代の奇妙な分割方法だけではない。教授は来日前の数週間、分厚い監査資料の精査に数十時間の労力を費やした。米国だとこの労力は1時間数百ドルに価する。ところが国立大学は教授に来日中の日当から計算して数百ドルのみ支払った。これは米国の通常監査料の5%にも満たない額だ。ニッポンの役所独特の奇妙な理屈を放任すると、低知価国家と名指しされ、世界の頭脳から敬遠されるのでは?

(出典: デイリースポーツ)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です