ゴルフにも忘却力が要る

コウベから、互いに永久スクラッチを誓い合って久しいドクターOの来訪をうけ、2日続けてラウンドした。オアフ島一番の強風が名物のホームコース(ハワイカイGC)はその日、一年に3日とない無風状態だった。はじめの9ホールは浮沈なしの39でおさめ、後半の9ホールに移った。ハンデ1の池越え420ヤードパー4では水に入れてダブルボギーにしたが、最終ホールのティーに上がった時点で7オーバーだった。このパーファイブをパーであがれば79、久々の70台だ。ティーショット、セカンドショットともにパーフェクト。残り100ヤードのサードショットをサンドウェッジで打ち上げると、ピン真横5ヤードのグリーエッジにふわりと落ちた。ここから2パットであがれば79と思うと胸がときめく。下りのラインだがエプロンに食われるとホールに届かないかも知れぬ。「少し強めに打つ」と心に決めてパットした。無情にもボールはホールのすぐ横を通過し3ヤードも先に止まった。返しのパットはホールをかすめたが結局ボギーの41。70台のスコアは夢と消えた。ゲームは大差で勝ったが翌朝になっても気分が重い。なぜ拳骨で叩くようなパットをしたのかと悔やんで止まぬ。

思い出すのは、医学生に講義で教えた忘却力だ。「人生には記憶力と忘却力が要る。学習では記憶力が求められるが、医者をしていると、辛くて忘れたいことが山ほどある。それを貯まるに任せて置くと、いつか重圧に耐えかねて医者を辞めたくなる。それでは困るから、辛さ悲しさをどこかで捨てねばならぬ。そこで要るのが忘却力だ。記憶を拭い去るためには、記憶力と同じだけの膨大なエネルギーが要る」と解説した。

70台のスコアを逃したこの一戦、戦いすんで日が暮れて、いま要るのは忘却力だ。明日までにすぱっと忘れて次のラウンドに賭けよう。

(出典: デイリースポーツ)

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