「観光ハワイが泣くで」

毎年3月になると前の海で跳ねるクジラの群れを、今年はまだ見ない。さては異変かと気懸りの最中、クジラの替わりに、ハワイは初めてという大阪のオッチャンが現れた。

「空からサンゴ礁に砕ける白波をみて、ついに夢のハワイに来たんやと思うと胸がときめきましたで、センセ」「それはよかった」「ところが飛行機を降りたとたん、リケリケバスという2両連結の家畜運搬車のようなオンボロバスに乗せられましてん。それも立ったままでっせ。ワシは牛や馬やないちゅうんや。入国手続きの係は怖い顔して『何用で何日滞在や?』とこうや。ホノルル入管のオッサンはなんであないに偉そうにしまんねん。ワシが過激派に見えるか?夢がいっぺんに壊れて消えたがな」「せっかくのハワイですから、気分を変えて楽しく過ごしましょう」「いや、センセ、もっと言わしてもらうで。空港からワイキキまで、なんで電車がありまへんねん。仕方なしにバスに乗ったら、アンタ、高速道路も一般道路もガタコンガタコンで脱腸になるかと思たわ。ニッポンやったら大字田舎と名のつくド田舎へいっても、きょう日こんな道路はおまへんで」「ハワイの悪路は全米50州のナンバー1です」「見たところホノルルの道路は昭和40年代のニッポンで流行った簡易舗装でんな。センセ、あんたら観光にぶらさがってこのハワイに住んではるんでっしゃろ。それやったら、税金をもっとしっかり収めて空港の家畜運搬車のようなバスやら、簡易舗装の道路を何とかしなはれや。観光ハワイが泣きまっせ」「ニッポンからの観光客は今年12%減りました」「そうですやろ。みな賢いさかいな。このままやといまの贅沢に馴れたニッポン人は、また来たろかいう気持ちにはなりまへんで」ようほざいたな、オッチャン。でも、いうてることに一理おますな。

(出典: デイリースポーツ)

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