診療回避をしたら即解雇

先週、酷暑の大阪から2ヶ月ぶりにホノルルの我が家に戻った。赤とんぼが飛び交う蒼い空を見上げると早や秋を報せる鰯雲。気温は28度前後だが湿気が少ないので爽やかだ。家で昼間エアコンを使うのは1年のうちほんの数日。貿易風の通り抜けが家屋全体を冷却してくれる。

8月の大阪が煉獄とするとハワイは天国。世界中の人が住みたがるわけだ。ところが天国でも手に入らぬモノがある。四季の移り変りと折々の味覚だ。夏の京都のはも料理、今が旬の秋刀魚、そしてもうすぐ松茸。味覚に引寄せられ、9月末にはまた大阪暮らしに戻るつもりでいる。

今回ホノルルに帰った翌日、妊娠6ヶ月で陣痛が始まった妊婦が救急車で運び込まれた10箇所の病院で診療を断られ、結局流産し胎児は死亡したというニュースが当地でも報じられた。ある病院では当直医師が他の患者の治療中だったので、当直事務員が救急車に「当院では受付けられない」と伝えたのが波紋を呼んだ。

「完璧主義のニッポン社会で、医療にこんなピットホールがあるなんて信じ難いですわ」ハワイ在住数十年の女史が憤る。「こうした場合には、米国では混乱を避けるため、わたし達医師が救急車の乗員と直接無線で交信します。アイオワ大学病院各科は数名の当直医を置いていますが、非番の医師全員にも緊急呼び出しの順番がつけられているのです。こんどの切迫流産例のように、当直医の手が塞がっているときに新たな緊急患者が来ると非番の医師が順番に呼び出されて診療をするのです。ナースも同様に呼び出されるというシステムです」「万全の対策だわね」「病院に来た患者は全員治療するというのがアイオワ大学病院の理念です。この理念に反して診療回避をしたスタッフは解雇される可能性があります」「随分厳しいのね」「人命を預かる仕事だから当然のことです」

(出典: デイリースポーツ)

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