レトロな民間サービス業

ひと月ぶりに大阪の我が家に着いてみると、電気、ガス、水道、電話、ケーブルなどサービス料金の請求書が郵便受けから溢れている。どれもこれも先月ホノルルに帰るまえに、銀行口座から引き落としの手続きを済ませておいたものばかりだ。口座引き落としは、以前余分なカネを引き出されて以来我が家の家禁だったのだが、留守中の諸経費支払いため今回に限り禁を破ると決めた。それが機能しないとは一体どういうことなのだ。

各請求書に印刷されたフリーダイヤル番号に電話を掛けてみると話中でつながらない。1件あたり20分を無駄に過ごしてようやく全件ハナシができた。

各社口裏を合わせたかのように、住み始めた最初の月の請求分は銀行振り替えが出来ないという。なぜ出来ないと尋ねても明確な答えはない。いまもって理由は判らぬままだが、たぶんキリのよい月初めから口座引き落としにすると事務手続き上の手間が省けるからだろう。自分の都合のために顧客の便利を犠牲にして恥じないサービス業の根本思想は役所と変わらない。翌日、電気やガス代の支払いに駆け回り半日を費やした。これを原稿書きに置き換えると20枚を超える作業に等しい。

アメリカで賃貸住宅を借りる場合には、契約時に不動産屋に銀行口座を告げるだけで自動引き落とし手続きは完了。各種サービス料金はすべて入居当日から日割り計算だ。

ニッポンの民間サービス事業は、官業になったつもりの官高民低思想に毒されているのではないのか?それはレトロな発想だ。

会う人毎に「民業なのになぜ初めから銀行口座引き落としが出来るように工夫や努力しないのか?」と尋ねてみるが誰もが首を振るばかり。ニッポン人は不当におしつけられた不便に対してちと寛容すぎるのでは?あるいは鈍なのかな?

(出典: デイリースポーツ)

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