続・古希のパワー

1週間まえ常夏のホノルルから寒い成田に着いた。東京での用件が済んだあと、さてどこでどう過ごそうかと思案したが、少しでも暖かいところへと大阪を素通りし南九州へと向かった。ホノルルに移って7年間に冬のニッポンに来たのは今度が初めてだ。常夏に馴れきった身体はおいそれと寒さに順応しない。寒暖に応じて熱を産みだす体内のボイラーが錆付いて上手く作動しないのだ。

正常体温が人種によって違うことは一般には知られていない。ニッポン人はインド人と並んで体温が最も低いグループに属する。それと対照的なのが北米に住む白人だ。ニッポン人より平均体温が1度も高い。白人のアメリカ女性を抱き寄せ密着して踊ってみるとよく判る。発熱しているのかと思うほど温かい。これを彼女がオレに熱を上げているからだと思い込んではいけない。相手の体内ボイラー機能がニッポン男児よりちょっと優れているだけのことなのだから。

九州に向かう車内で読んだ小説のなかで「新老人」という新語に遭遇した。過去と決別し新しい人生を生きる熟年だという。言葉遊びは作者の勝手だが、突き詰めると「○○の会」や「ナントカのサークル」に群れて、みんな仲良く遊ぶグループのことではないのか。「新老人」ごときに括られてなるものかと激憤するうちに目的地に着く。

わざわざ大阪から飛んできてくれたR子さん夫妻に迎えられゴルフコースに出る。南国とはいえ寒風吹きすさぶ中で毎日2ラウンド。暮れにホノルルで完敗したリベンジマッチに勝ってゲームは振り出しに戻った。

温泉に浸りながらなぜか気の合う夫妻との共通点を探る。群れない、自分の画いた地図から外れない、この二つを守るために死力を尽くす、に尽きる。二組のカップル全員の歳を併せると280年。280歳がよく食べ、よく飲み、世界を論じている間に鹿児島の夜は更けていった。

(出典: デイリースポーツ 2008年2月7日)

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