身体に合わぬシャツ

今年の2月、21年ぶりに過ごした日本の冬は記憶に残る三寒四温の法則を無視した異常な寒さだった。常夏ハワイに慣れたからだは小雪の舞う大阪の冬に順応しない。からだの熱産生不足分を厚着で補うため量販店に長袖シャツを買いに出かけた。コージュロイのLサイズ長袖シャツはからだにフィットして快適だったが、一度洗濯したらSサイズに縮んでしまった。

それならXLサイズを買って水に通せばLサイズに縮むだろうと考え、再度出向いた量販店で色違いの3着を買った。ところがこの代物、期待に反し洗濯してもXLサイズのままで小さくならない。「レシートは残してあるから、まだ袖を通していない2着を返品すれば引き取ってくれるかな?」家内に尋ねると「だめよ。ここはアメリカじゃないもの」とにべもない。

以前コウベのブティックで求めた高価なドレスを翌日色違いと交換交渉に出かけたわが家内は、それを拒絶する店主との水掛け論に打ち勝ち見事返品に成功した。そのときの不快な体験以来、ニッポンの小売業界を冷ややかな眼差しで見るようになった。

「返品も交換もしてくれないとなると、このシャツどうすればいい?まだ新しいのにこんなにブカブカでは着られないよ」「箪笥の肥やしにするか、サイズの合う人に進呈するかだわね」「モッタイナイ、資源の無駄だ。それに我が家の家計は丸損だよ」
 
アメリカには、店頭通信など販売方法の別なく、売った商品が1ヶ月以内にレシートをつけて返品された場合、業者に返品または交換に無条件に応じるよう厳しく命じた消費者保護法がある。この法律は業者の売り逃げから消費者を護る目的で立法化された。返品や交換は総売上げの2%程度だから、消費者の購買欲を増すための安心料だと思えば安いものだ。ニッポンでも立法化されると消費者保護に加えて資源の節約になるが、その実現は正義が律する社会でなければ困難だろう。

(出典: デイリースポーツ 2008年3月6日)

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