観光ハワイの危機

ホノルルの我が家で暮らして2週間が過ぎた。地元の魚屋で買う近海ものの活けのマグロは、赤身の刺身が飛び切り旨い。年中が旬のカツオと並んでハワイの隠れたグルメだ。両方とも相方はやはり日本酒。いまの気候は大阪の10月中旬ぐらいだから、熱燗が合う。そんなホノルルでも、半月も暮すと西中島南方食堂の秋刀魚の塩焼きや、店長手作りの卵焼きが恋しくなる。コラムが掲載される頃大阪に戻ったら、真っ先に駆けつけねば。

ニッポンから届く便りはもっぱら桜の開花と阪神タイガースの快進撃。円高、ガソリン値下げ、物価高騰、景気下降、日銀総裁の空席のすべてを組み合わせると、花だ野球だと呆けている場合ではない。ニッポンの水面下では深刻な事態が秘かに進行しつつあるようだ。

先週ホノルルでは60余年の歴史をもつアロハ航空が倒産した。永年ハワイ各島間のルートをハワイアン航空と2社で分けあってきたこの老舗航空会社は、米国本土西海岸にも路線を持ち年間50万人の観光客をハワイに運んでいた。今回ハワイ路線を持つ中小航空会社2社もアロハ航空と相前後して相次いで倒産。そのあおりでハワイの観光客は今後10%減と予想される。

当地のニッポン語ラジオ局は、毎朝日本からの到着便数と乗客数を報道する。バブル前のハワイ観光最盛期には1日1万人という時期もあった。8年前の9.11事件以後の一時期2千人を下回ったが、ここ数年は4千人まで回復維持した。ところが航空運賃に数万円もの特別燃費加算がつくようになって再び下降、昨日はついに2千人にまで落ち込んだ。

その影響でレストランもゴルフコースもガラガラ。当日でも予約がすぐ取れるのは異常だ。レイオフを怖れる地元民は買い控えに走る。だからショッピングセンターもスーパーも人影まばら。物価だけはじりじりと上がる。なにやら目に見えぬ重大危機が迫り来るのが肌で感じられ薄気味がわるい。

(出典: デイリースポーツ 2008年4月10日)

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