後期高齢者医療保険

「新しい医療保険の掛け金を年金から差し引かれたり、払わなんだら保険証を取り上げるぞと言うて脅されたり、年寄りは踏んだり蹴ったりでんな」久しぶりに会った大阪のオッチャンがぼやく。

「センセ、アメリカでも年寄りはこんな目に遭うてまんのか?」
「米国で本人の承諾なしに収入からカネを差し引くのは権利の侵害で憲法違反と言われています」
「今度の保険は年寄りが医者に掛かり過ぎるのを抑えるためや言うてますが、病気になったら医者に行くのは当り前でしょ」
「ニッポン人は年に平均16回医者に掛かかります。これを米英独仏の年6回と比較すると飛び抜けて世界一です。受診率が高いのはニッポンに病人が多いからではありません。皆保険制度のお蔭だといわれていますが、それとは別のワケがあります」
「そのワケは?」

「医者が患者を診たがるからです」「どうして?」
「ニッポンの診察料は初診が2千6百円、再診が6百円ほどです。これをアメリカの初診1万円、再診5千円と比べるとあまりに安い」「そうでんな」
「これほど安いと、医者は患者を数で診ないと赤字になります。だから患者に『明日も明後日も来なさい』と言ってしまう。その結果医者は1日何十人もの患者を診て慢性過労、患者は3分診療で不満爆発、政府は膨張する医療費を年寄りの年金から取り立てるという悪循環です」「解決策は?」

「今の診療スタイルを総点検し、頻回に診る必要のない患者は間隔を空けて診る、患者数が減って減収になった分だけ再診料を値上げする。この方式に転化すると医師不足の解決にもつながります」「?」「この2ヶ月間、テレビのワイドショーなどの番組に、医者が出演して意見を述べるのは一度も見かけませんでした。医療の実行者である医師は、高齢者医療費や医師不足の解決策を提案するべきです」「センセが出はったらどないです」「?」

(出典: デイリースポーツ 2008年5月22日)

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