アイオワ大洪水

6月14日から翌15日にかけて中西部を襲った豪雨は、一夜にしてアイオワシティの中心を流れるアイオワ河の水位を9メートル30センチも押し上げた。堤防もなく自然のままに流れる大陸の河川の常として、濁流は当然のように街に流れ込み、ダウンタウンのホテルや商店の1階天井にまで達した。

両岸の丘の上に建つアイオワ大学本部、各学部、大学病院は、浸水こそ免れたが、アクセス道路の遮断により孤島と化した。間を置かずアイオワを訪れた大統領は非常事態を宣告、その日のうちに政府から巨額の救済資金が届けられた。以前ハリケーン災害の際、緊急事態発動の出遅れを誹られたせいか、今回の政府の決断は素早かった。

洪水の3週間後に訪れたアイオワシティはそこここに洪水の跡。大学の大劇場はステージまで水に浸かり軒まで水没した美術館は展示品の大部分を失ったが、アメリカンは皆おおらかで元気だ。洪水なんかに負けてたまるかという意気地がいい。

元同僚教授たちが開いてくれた連夜の歓迎パーティで、なぜかジャパンが話題に上らない。在任中はニッポンから多数の留学生や訪問者があり、学内に独特の存在感があった。いまではそれが隣国の韓国や中国に替わってしまった。かつて志を抱いて海外に試練の場を求めた若者たちは、もう出てこないのだろうか。豊かで居心地のよいニッポンがハングリー精神を失わせたか、それとも若者たちに、苦難に挑立ち向かう気概がなくなったのか?最近のニッポンでは、闘う男に価値がないのが淋しい限りだ。

米国大学人の最大の関心事は秋の大統領選挙だ。ブッシュ大統領の2期8年は歴史に残る不幸な時代だった。みんな変化を期待しながらも若いオバマには未知の怖さが残る。マケインでは魅力ある米国の再生はありえない。混迷の中で苦悩は続く。

(出典: デイリースポーツ 2008年7月17日)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です