調査委員会

教育委員会は地方教育行政のすべてを取り仕切る。「すべて」には教師の採用試験も含まれる。その教育委員会の幹部が、教員採用試験の受験者から賄賂をとって試験結果を操作し、贈賄した受験者を採用してきたというから仰天した。

ニッポンでは、アジアの近隣諸国と同様に、政治家や官僚と企業間の贈収賄が日常的である。疑うなら過去1年間の報道を総覧してみるとよい。これほど度重なると市民もメディアも贈収賄は悪という感覚が薄れる。今度の事件も「またか」と軽く受けとめられ時の流れとともに忘れられるだろう。

だが、今度の事件を将来展望の立場から見るとコトは重大だ。教育の総元締めである教育委員会のトップが受験生から平然と賄賂を受け取り、試験結果を改ざんする。教師にならんとする人間が教職をカネで買うことに逡巡しない。こんな人間たちが生徒に「正義とは何か」を教えられるのだろうか?

「外部調査委員会の調査は進んでいるのかね?」アメリカンの友人が尋ねて呉れる。「いや、教育委員会内部で構成したチームが調査しているようだよ」「それでは徹底調査にならないよ。内部の人間は組織防御を最優先するからね。こんなケースの場合、米国だと企業のコンプライアンス担当の専門家や弁護士、それに一般市民で構成する第三者グループに調査を依頼する。教育委員会という組織の構成やその存続の是非を問わないと市民は納得しないよ」と友人は断言する。「ニッポン社会の仕組みをみると権力の分散が適切でないね。試験と採用を別々の組織がする仕組みだったら、今度の不祥事はなかったと思うよ」

そこで思い出すのが米国の病院監査の仕組み。認定するのは民間の病院認定合同委員会、認定結果を受けて認可を下すのは州政府だ。ニッポンの官は民の認定をそれほど尊重するかどうか、それが問題だ。

(出典: デイリースポーツ 2008年8月7日)

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