「こんな筈ではなかった」

先月中旬大阪のオッチャンから届いた便りには「大阪も涼しゅうなって朝夕は肌寒いほどでっせ。早よお越し」とあった。「ほんまかいな」と半信半疑でホノルルを発つ。大阪に着いてみると蒸し風呂に浸りきった暑さにうんざり。「暑さも一時と比べると和らぎました」という慰めの言葉に今夏の酷暑の不快さが推しやられる。しのぎ易さではハワイは天国。日中の気温は30度を超えるが開いた窓から入ってくる冷たい貿易風のおかげで年中クーラーは要らない。大阪のすまいでは異常な暑さに2台のクーラーは四六時中回りっぱなし。「まさか」に続く「こんな筈ではなかった」の現実否定願望の言葉も空しい。

着いて3日目の月曜日、首相の「まさか」の辞任に遭遇し仰天した。去年の参院選挙の勢力逆転でこの国のリーダーは出口が見えない袋小路に押し込められた。ストレスで悪化するのが特性の潰瘍性大腸炎を持病にもつ前首相は病気を理由にその職を辞任した。その混迷を一掃するのはわたしだとばかりに就任した首相は、官邸や院内を歩く姿だけは颯爽としていたが、参院野党の数には勝てず無念にも降板を決意した。

いま世界は大恐慌に向かう可能性が極めて高い。身近なアメリカンたちも明日が見えないといっては投資を控え、生活防御の姿勢をとりはじめた。国の一大事には与野党協力して乗り越えるのが政治の姿ではないのか?党益にしがみつく姿は二大政党のそれではない。

与党の党首候補者は群雄割拠。次期リーダーは誰がなろうと前任者の轍を踏む困難が待っている。衆院を電撃解散し国民に是非を問うた元首相の例に倣って、次期首相も就任と同時に「まさか」の解散を仕掛けて見たらいかが?市民の生活感覚は危機察知に敏感だ。「こんな筈ではなかった」大勝利が実現するかもしれませんぞ。

(出典: デイリースポーツ 2008年9月11日)

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