ニッポン崩壊

「わが省に責任はないものと考えております」自らが放出した大量の有害汚染米が食用に転用された重大事態を招いた農水省の実務実行最高責任者である事務次官が発した言葉だ。テレビのインタビューを見ながら思わず「間違っている!」と絶叫した。間をおかず別のテレビ番組に出演した農水大臣は「毒性は低いから食べても大丈夫」と発言した。現首相の色に染まったのかまるで他人事のようなコメント。食べて大丈夫な米ならなぜ食用を禁じたのか説明責任がある。「やかましい民共でも言いくるめるのは簡単」というハラが見え見えだ。ナメたらアカンで。

有害と判っている米を放出したら、業者は転用して巨益を計るのは自明の理。情報は伝えた。監査もした。それでも転用したのは業者が悪いで済ませる役人には責任感というものがない。省庁のトップはすべかららく民のために尽くすという自らの使命と責任を自認しないのだろうか?

かつてニッポンの官僚は内外から「間違いのないお上あるいは公吏」と評価を得ていた。キャリアのエリートたちは国の命運を担う矜持にあふれ、全体のために自己を捧げる職務哲学(ノブリスオブリュージュ)を全うした。ニッポンが今の大国に発展したのはその人たちのお蔭である。出世と利益誘導のみにとち狂った今のキャリア官僚の堕落ぶりだと、ニッポン崩壊も遠くないだろう。

米国の「食の安全の見張り番」はFDA(食品医薬品局)だ。NYの日本料理屋から出たフグ料理の許可申請を「食べると死ぬかもしれぬ毒魚料理は許可しない」とFDAは断固却下し続けた。農水事務次官にはこの頑固さを見習ってもらいたい。数年後にNYの料理屋には限定特別許可が下りたが、ハワイではいまだにご法度。フグを食べたくなるとニッポンに来るしか手はない。毎春秋大阪を訪れる裏ワケは、今だからこそ明かすが、テッサテッチリなのだ。

(出典: デイリースポーツ 2008年9月18日)

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