『ソー、ホワット!』

深まりゆく秋の宵、久しぶりに大阪のオッチャンと一杯やった。話題は阪神の惨敗理由から総理の行状に及んだ。
「『総理が毎晩高級ホテルのバーで取り巻きと一緒に高価な酒を飲んでいるのは庶民感覚から掛け離れている』と女性の新聞記者に詰め寄られ、麻生はんもキレはったそうでんな」
「そのようですね」
「センセも高級ホテルの会員制バーみたいなところで飲みますのやろ?」
「ええ。ホテルのバーは人と会って大事なハナシをするときには、静かでプライバシーが保てる点で最適です」
「高いんでっしゃろな?」
「キタのクラブなどと比べると安いものです」
「ホンマでっか?一杯なんぼ?」
「普通の飲み物なら一杯2千円でお釣りがきます」
「そんなもんでっか。それやったら女性記者が総理に詰め寄るほどのことやおまへんな。これには何かウラに別ワケがおますな」
オッチャンは思案する。
「大富豪の家に生まれた人の暮らしは普通の人と違っていて当然です。だがこの国を強く支配している『平等至上主義』はそれを否定するのです。他人の豊かさを妬むのは本来さもしいことなのですが、悲いかな、それが人の性(さが)なのです」
「そうでんな」
「もし仮に総理がその女性記者の意見を容れて大衆居酒屋に行かれたら、世界経済はもっと落ち込むでしょう」
「ニッポンでは総理が居酒屋に行きよる。経済が危ないのと違うかというて株は下がりますな」
「番記者は特別許可をもらって総理に密着しているのですから、取材範囲を日本国リーダーとしての総理に限定すべきです」
「センセ、これがアメリカやったらどういう展開になりますやろ?」「大統領は分をわきまえぬ記者に『ソー、ホワット!』と言って相手にしないでしょう」
「どういう意味ですねん?」
「『それがどうした!』という意味です。そのあとに『どうでもいいことじゃないか』という隠れ言葉が潜んでいます」

(出典: デイリースポーツ 2008年10月30日)

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