Y氏逝く

このコラムにも何度も登場したY氏が先週59歳の若さで急逝した。腹痛のため実施した超音波検査で腹部大動脈瘤が発見されたが、まさかここ数日のうちに急変することはあるまいと山積する年度末の仕事を片付けていたY氏の油断を、2日後に腹部激痛が襲った。病院に急行する車中で破裂した動脈瘤が大出血を来たし、2時間を経ずして不帰の人となった。

つい1週間まえ電話で互いに無事か元気かと確かめ合い、4月にニッポンでゴルフをしようと約束したばかり。元気一杯の声も再び聴くことはできない。胸は締め付けられ涙が流れて止まぬ。友を亡くした今、あの時ああしたらこうすればよかったのにと悔やまれる。だがタラレバはすべてあとの祭り。いまはただ友の冥福を祈るのみだ。

職員2千人を擁する法人経営の重鎮にあったここ10余年、Y氏は仕事も遊びもすべてが順風満帆。超スピードで拡大する事業のすべてに采配を振っているうち、自らの健康管理にまで気が回りきらなくなった。「そんな無理してカラダは大丈夫かい?」会う度同じ言葉を何十回も繰り返してきたが、取引先の夜毎の接待、何十回目かの禁煙の誓いも虚しくまたもや手をのばすタバコ、「薬をきちんと抜かさず飲まないと心臓に負担がかかりますよ」と医者に脅され朝夕のむ降圧剤も忙しさにかまけて飲んだり飲まなかったり。

これはY氏だけのことではない。働き盛りの日本男子に共通する病気軽視症候群だ。夜更けて独りになると病気にたいする恐怖がじわじわ湧いてくる。「なーに、このオレに限って病気で倒れたりするものか」と超楽天的自己暗示によって恐怖心を振り払い、翌日もまた紫煙をくゆらせ杯を飲み干す。これが何百日も重なると潜在する病気はじわじわと後戻り不可能の域に達する。

この際全ニッポン男性に告ぐ。「医者の言うことをもっとマジメに聴け!手遅れになってからではアカン」。

(出典: デイリースポーツ 2009年3月5日)

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