春まだ遠い大阪 

「近いうちにホノルルを発ってニッポンへ行く予定です」
3月末、大阪のオッチャンに電話で予定を報せた。
「センセは今きたらアカン。ここ当分はハワイに居はったほうがよろし。ニッポンにきたらハラの立つことばっかりで憤死しまっせ」と諌めてくれた。大阪に着いて一杯やりながら、「一体何にハラを立てているのです?」と尋ねてみる。
「政府でんがな。国に莫大な借金があるというのに税収の倍以上の予算を組んで、全国のこども一人に2万ナンボの金をばらまいてますねん。親さえニッポンに住んでたら、おるかおらんか判らん外国人の子どもにまでも支給するんでっせ。おまけに高校生の月謝もタダにするいうてますねん。若者を自立の出けん人間に育てて世間にひりだすようなもんやおまへんか。みーんな元はというとわしらが納めた税金でっせ。これが怒らずにおれまっかいな」
「ばら撒きのほどこしは、それでなくても自己中心的な現代ニッポン人の非自立性を増悪させる愚策です。勿論仮定のはなしですがアメリカでこんな“ばらまき愚策”が実施されたら、納税者による大統領のリコール運動は必至ですな」
「ニッポンは戦争で焼け野原になったあと、ワシら昭和の人間が必死に働いて豊かな国に作り上げたんやおまへんか。それが近いうちに崩壊し消滅するやろと賢い人が他人事みたいに予言してまっせ。テレビに出てくる総理の顔をみるたびに、巨額の脱税をしても言い訳さえ上手にすれば刑事罰から逃れられるんや、ニッポンは正直者がバカを見る国になってしもたと思うと、嫌悪感がつのって気分が滅入るんですわ」
脱税を善良な市民に対する敵対行為とみなすアメリカでは、数万円の脱税でも懲役刑。10億円だと懲役20年が相場だという。
こんどニッポンでは、飲むたびにみんなから悲観的展望と愚痴を聞かされる苦い酒。閉塞感はあっても、まだ楽しい酒だった去年の暮れと大違いだ。オッチャンが「いまきたらアカン」といってくれたワケがこれで判った。
ハワイに留まっていたほうが、憤死する心配もなくてよかったかな?

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