「肩すかし」は禁じ手か?

「ええ勝負でしたな。久しぶりに熱狂しましたわ」先々週からホノルルに居続けしている大阪のオッチャンは、衛星中継の大相撲大阪場所千秋楽の横綱朝青龍と大関白鳳の優勝決定戦を見て感激する。朝白ともに12勝2敗で迎えた千秋楽。白鳳が勝って13勝したあとの結びの一番は朝青龍と千代大海だ。横綱が優勝の可能性を残すためには、この一番をどうしても勝たねばならぬ。横綱は猪突猛進してきた千代大海の左にとんで送り出した。「ワテも、この手が一番無難やと思うてましたんや。やっぱり横綱は賢いでんな」想い当たったオッチャンは大満悦だ。

朝白ともに13勝2敗同士。優勝を賭けての決定戦を迎えて、場内は興奮の坩堝と化した。準備のできた朝白は再び土俵にあがる。制限時間いっぱいとなった土俵を、場内一同固唾を呑んで見守る中、二人はぱっと立ち上がった。すかさず白鳳は左にとぶ。目の前から相手が消えた朝青龍は、たまらず左手を土俵についてしまった。この間約0.5秒。座布団の舞う土俵上で、テレビ画面いっぱいに苦笑いする朝青龍の表情が印象的だった。

実況のアナウンサーに「優勝を決める大一番ですからぶつかり合う相撲を期待していました」と水を向けられた解説者は「もう少し違った相撲をとって欲しかったですね」と同調する。それにつられたかのように、ため息ともブーイングともつかぬ声が場内に充満する。

「黙って聴いてると、まるで白鳳がインチキをして勝ったようなコメントを言うてますな。禁じ手でもない立派な決まり手に相撲のプロの解説者がケチをつけて、どないしますねん」オッチャンが憤る。「プロレスなら決まり技が見世物ですが、あれは八百長でっせ。真剣勝負の大相撲で相手の意表を衝いて勝った白鳳は、いうてみれば、頭脳の勝利でんがな。白鳳関、立派な優勝です。おめでとう」

(出典: デイリースポーツ)

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