ハリケーン「カトリーナ」

史上最大のハリケーン「カトリーナ」は、8月29日、ニューオーリンズ市を直撃した。市長は、直撃の2日前に、全市に避難勧告を出した。だが脱出するにはクルマが要る。避難先での宿泊や飲食にはカネも要る。クルマとカネのない貧者は、仕方なく市内に留まった。

風速75メートルの烈風はビルの窓ガラスを粉砕し、住宅をなぎ倒した。海抜がマイナスのニューオーリンズ市を護る堤防は決壊し全市が水没、多数の死者がでた。生存者はハイウエーなど高所に移動し救援の到来を待った。水、食料、薬品を求めてひたすら待ったが、救援は来ない。救援物資を載せた陸軍のトラックが市内の避難所に初めて到着したのは、5日も後のことだった。

ぶち切れた市長は、テレビで「救援の空約束はもう結構。会議や会見の前に早く手を打て」と、大統領に向かって絶叫した。

民主党の女性州知事は、州兵に緊急出動命令を下さず、大統領に救援の要請もしなかった。州兵の指揮権は連邦政府に譲らぬと頑張る。今風に言うと、頭の中真っ白で固まってしまったのだろう。

黒人ラップ歌手は、テレビで「大統領は被災者が黒人だから放置する」と発言、救援遅延から起きた人種差別議論が全米を揺るがせた。

4日目、初めて被災地を訪れた大統領は「十分手は打ったが、結果には満足していない」という歯切れのわるいコメントをした。そのウラには、州知事が大統領に救援要請をしないことへの、非難が込められている。

当事者たちの責任のなすり会いに、アメリカ国民はうんざり。全米を代表する識者たちが、今度の救援遅延を「アメリカの恥」だの「アフリカ以下のアメリカ」などと自嘲するのは、役人特有のことなかれ主義に対してだ。

10年前の震災時の神戸でも、当事者間で責任のなすり合いがあったのだろうかと、いま、想いを馳せる。

(出典: デイリースポーツ)

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