狂乱の国民年金

8年前、何十年間も年金を納め続けた家人が年金受領の年齢に達したので、手続きに社会保険庁に出向いたところ数年間の未納期間があると一方的に宣告された。「そんなことはない。毎年きちんと収めてきた。記録を見直してくれ」と抗議しても「証拠になるレシートをみせろ」の一点張り。10年以上も前のレシートがある筈もなく受領額を大幅に減額され無念の涙を呑んだ。以来この役所の機能に疑惑を抱いてきたが、最近その無能ぶりが明るみに晒され国家的大問題を招いている。単純な事務手続きがなぜ「納めた」「納めない」の水掛論を呼ぶのか。テレビに出演した専門家によると、結婚や離婚で姓が変わる、居住地や就業地が変わる、氏名の読みかたを違えてインプットするなどがその理由だという。これらを事前に予知できなかったのは無能の証拠である。

アメリカでは出生時に取得した納税者番号が生涯個人のIDになる。長じて所得税を納める場合には、同時に国民年金の掛け金として社会保障税を納入する。掛け金納入には納税者番号を社会保障番号と呼び替えてIDに用いる。社保番号は氏名、住所、職場の変更や結婚離婚を繰り返したとしても、永久不変唯一の個人識別IDである。銀行口座開設、運転免許証取得、パスポート取得のIDには社保番号が不可欠だ。ニッポンでも氏名のかわりに社保番号のような唯一不変の個人IDが存在していたら、今回社会保険庁が招いた無秩序大混乱は防止できたことだろう。

社保番号にかわる国民総背番号は過去に何度も議案として浮上したが、その都度全政党の反対により消滅した。背番号制は徴兵制度に繋がると反対した政党もあった。5千万人の年金納入の証拠を照合する作業には対象各人のID設定が必須だ。国民総背番号制を緊急導入し、それに拠って照合作業を実施するのが順序ではないのか。

(出典: デイリースポーツ)

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