一体、プロとは何?

5月7日、今年イタリアのトリノで開催された冬季オリンピックの女子フィギュアスケートで優勝し、ニッポン選手のなかで唯一人金メダルを受賞した荒川静香選手が競技生活にピリオドをうち、プロスケーターとして出発すると宣言した。記者会見で「プロ転向後の初のビジネスは、チャリティーショーなのでギャラはゼロ。ゼロからの出発です」というコメントが爽やかだった。

アマチュア時代には、日本政府や各種団体が後ろ盾になり、コーチや支援スタッフに護られて、競技に勝つこと以外の一切に煩わされることはない。だが、一旦プロに転向したら、常に新しいプログラムをショウに取り入れ、人気を逸らさぬ苦労がいる。ショウビズは厳しい。飽きられてしまうと終りだ。

テレビをみながら、プロとはなにかを考えてみた。プロは、もてる技能の金銭的価値を収入に変えて生業とする個人という定義にいたった。

若い頃「その手つきではプロの外科医にはなれないぞ」と手術中に叱られた。時が流れて立場がかわると、同じ言葉で若い外科医にハッパをかけた。

だが、そうして育てた外科医もニッポンではプロとは呼べない。技量に不足があるのではない。いまの診療報酬制度では、手術の値段は難易度、必要なスタッフの人数、かかった時間を基礎に計算した数値(点数)で決められている。これには外科医の技能の値段は含まれていない。経験や技能は不確定要素という理由で、考慮の範囲外なのだ。

アメリカでは、わたしはプロの外科医である。だから手術の値段は自分で決める。わたしの手術料と医療保険の定額手術料には当然差が出る。その差額は、患者の自費か、別加入の保険が支払ってくれる。自費も別保険もない患者には、わたしはタダで手術をする。

日本ではこの方式を「混合診療」と称して禁じているが、それではプロの外科医は育たない。

(出典: デイリースポーツ)

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