米国セクハラ事情

「おっ髪が短くなったね。ますます素敵だよ」
「あら課長さん、ありがとうございます」

月曜日の朝、週末にヘアサロンにいってきた部下の女性職員の変身ぶりを目ざとく気づいた男性上司が褒め言葉をかける。ニッポンの職場では日常的に聞かれる、上司と部下の微笑ましい会話だ。

「Hさん、アメリカだと、この課長の言葉はセクハラになるのですよ。もし女性職員が訴訟をおこしたら、課長は裁判で完敗です」
「えっ、ほんまでっか。服装や髪型がエエなあ、綺麗やなあと褒めてやってどこが悪いのでっか。それがアカンといわれるのやったら、部下とハナシも出来まへんな」

場所はホノルルのレストラン。今度ハワイで新しく始めるビジネスの準備を進めている大阪のHさんに、セクハラ予防の進講をしたときの会話だ。

「最近きれいになったなとか、いつまでも若いなとか、ワシはいつでもウチの女の子に言うてまっせ。これは『ワシはあんたらのこといつも気に掛けてるで』という思いの表現ですがな。ウチの職場はこれで人間関係を保ってますねん」
「それは大阪だけのことにしておいてくださいよ。アメリカでは、上司が部下の容姿、年齢、着衣、持ち物、趣味、恋愛などに関心を持つのは勝手ですが、それを表に出してはいけないことになっているのです」
「ワシには理解できませんな」
「たとえば、Hさんに『綺麗になったな』と言ってもらった女子社員が、内心では『社長にわたしの容姿がどうのこうの言うて欲しないわ』と思っていたらどうします。Hさんは、この女性の聖域を侵したことになります」
「それは屁理屈というもんでっせ。ワシの言うてることは常識ですがな」
「それに、『いつまでも若いな』というのは年齢差別といわれますよ。会社がスタートしたら、くれぐれも、口害に気をつけてくださいよ」

(出典: デイリースポーツ)

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