大学病院医師の収入

最近の週刊東洋経済(東洋経済新報社)が特集「日本人の全給料」で報じた大学病院医師の収入の、あまりの僅額に愕然とした。医大卒後4年目の医師が大学病院で年収350万円。コンビニのバイト店員とほぼ同額という。

医大に入学すると6年間に私立で2千万から5千万、国公立で350万円の学費が要る。国公私立の区別なく、政府は国庫から医学生一人につき5千万円もの助成金を支出している。

これほどカネをかけて育てた医師を、年収350万円のまま放置しておいていいのか。他院でのバイトで生活費を稼ぎながらでは、患者の生死に全力で立ち向かうのは不可能だ。それでも大学病院に残るのは講師、助教授、教授と昇進を目指すからだが、昇進してもカネの面ではお先真っ暗。講師で年収7百万、助教授で8百万、教授になっても1千万円前後だ。

こんな安月給では暮らせないから、教授以下スタッフ全員が市中病院で、手術謝礼金、代診料、当直料をあてに副業にいそしむ。教授といえば企業でいうなら部長クラス。たとえばソニーの技術部長が、薄給だからといってパナソニックの研究所で時間給の副業をしますか?それに似たことが現実に起きていながら世間も国も知らん顔。日本社会の摩訶不思議さだ。

某大学の医学部教授に薄給のワケを糾してみると、医学部も文学部も教授は同じ文部教官だから、給料も平等に同額なのだという。外科教授は年間何十億円という診療収入を大学病院にもたらす。そんな人物の給料が他の学部の教授と同額なのは理不尽だ。

アメリカで現役外科教授時代、わたしの年俸は大統領よりも多く法学部長の3倍を超えた。妥当な報酬で一層やる気になり、他人様の倍は働いた。

いまニッポンの大学病院はソ連の崩壊前夜に似ている。官僚イデオロギーの呪縛を受けた悪平等制度を打ち破らぬ限り、明るい未来は来ない。

(出典: デイリースポーツ)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です