必須世界史未履修問題

全国高校の10%にあたる540校で、8万3千人の生徒が必須科目である世界史の授業を受けないという前代未聞の事態が発覚した。教師たちは自校生を受験競争に勝たせるために、授業を受験科目に絞り込み必須科目を無駄として省いた。教師、校長、教育委員会の作るシンジケート内部での了解事項だったのが、不運にも明るみに出てしまった。これは教育者にあるまじき愚行である。

加担した教育関係者たちは、本来、欺瞞や隠蔽を邪悪と定義し、それに立ち向かう正義や勇気の価値の何たるかを生徒に教える立場にある。今後は、教壇に立ち生徒に何を説いても、鼻先で笑われるだろう。こんな事態を招いたら、われわれ正常人の感覚では、とても教師を続けてはいられないと思うが、どうなさるか末永く見守ろう。

事態の収拾には文部科学大臣が乗り出した。はじめは未履修単位を完全履修させるというから、教育基本の本質論を展開する文科相でよかったと応援していたら、いつのまにか、70時間の補修授業になり、最後には50時間で決着した。政治家の思惑、関与者の責任、卒業までの期間限定、父兄の懐柔策など、都合あわせの方便に終わって失望した。

もし、これが米国だったら「必須科目未履修の生徒は履修した生徒と比べて、将来学力や教養に有意の差を生じるか?」という根本的な議論が起こる。各地大学から高校教育専門家がオーソリティとして召集され、早急に「有意の差なし」と結論するだろう。この結論を根拠に、生徒は補習授業なしで全員卒業。めでたしだ。

日本だと、履修した生徒の親から「不公平」だとクレームがつく。「公平」は神聖にして犯すべからずという国だから、文科相は「公平」を期して未履修生徒に50時間のペナルティを課した。

ペナルティで思い出したが、偽造論文の教授は処分を受けたかな?

(出典: デイリースポーツ)

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