「民主」主義

与党党首であり国の将来を担う総理大臣と最大野党の党首の間の会談は不首尾に終わり、国の命運にかかわる重要な問題には何一つ解決の糸口は見つからない。
この1週間テレビや新聞で今回の党首会談にまつわる多種多様の見解や主張を見聞した。だが会談が不首尾に終わったのは、党名に「民主」主義の名を掲げる野党の役員会がその大原則に反したからだとは誰も言わなかった。

民主主義の発祥の地である米国に永年住んでいると、それゆえに生ずる煩雑な手続きに対する我慢や、自らの想いと違う指導者に従う忍耐を強いられるという事態に遭遇する。

いま米国民の大多数はブッシュ大統領のイラク政策に反対である。タイガースファンのごとく熱狂的な共和党の支持者であった友人も、ホワイトハウスの政策を悪しざまに口にだして批判する。
「そんなに嫌なら大統領のリコール運動でも起こしたら?」
と冷やかしてみる。
「リーダーを無能ゆえ辞めさせることは、選んだ自分達が無能の証拠だから出来ない」
「それなら文句いっても無駄じゃないの?」
「行き場のない辛さだ。せめて文句ぐらい言わせろよ」と苦渋の本音を吐く。悲痛な叫びのウラには今度の党首会談で野党に欠けると断じた民主主義の大原則が隠れている。

大統領も党首も選挙のまえは単なる候補者だ。だが一旦選ばれたら全権を託されたリーダーになる。選んだ集団に属するものはリーダーの決断に従い運命を共にするのが民主主義の大原則だ。それが嫌なら別の集団に移ればよい。

野党の役員会は「今、国家は大事な分かれ目にあり党利党略のときではない。党首の決断だからこの際大連合立に賭けようではないか」と提案するオトコを欠いた。だから党首をして「わが党は政権を担うにはいまだ未熟である」と言わしめたのだろう。

(出典: デイリースポーツ)

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