正義の番人

先日、関東のどこかの街で若者たちがたむろし騒いでいるという住民からの苦情を受けて23歳の警察官が駆けつけた。若者たちに立ち退くよう説得したが、すんなり従う手合いでない。やむを得ず拳銃を抜いて威嚇し、立ち退き命令に従わせたという。

記事を読んで、この23歳の若者に「たった一人で複数を相手ではさぞや恐ろしかったろう。よくぞ勇気を奮い起こし善良な市民の権利を護るための任務を果たしてくれた。近頃めったにみられぬ男らしい振る舞い、アッパレだ!」と秘かに賞賛の拍手を送った。

ところが2、3日後の続報を読んで仰天した。この正義の番人は拳銃の過剰使用で上司から叱責を受け1ヶ月の停職処分を食らったという。それに対して各紙は勿論、テレビのワイドショーなどでも一切反論はなし。地域住民を悩ませた愚か者たちは、逆転勝利に溜飲を下したことだろう。納得のいかぬまま成田からホノルルへ。

迎えのリムジンドライバーHに、早速アメリカンの心情を探索してみる。Hは永年連邦政府に勤めた後、今は定年後の暇つぶしにドライバーをしているホノルル退屈男だ。余談になるが米国ではこうした転職は珍しくない。わたしの勤めた大学を引退した億万長者の元内科教授が空港送迎専門の個人タクシーのハンドルを握っている。一度乗せてもらって何故にと尋ねたら「病人は診飽きたので健康な多数の人と接してみたいから」だと。天下りはニッポン特有の現象と見る。

「この拳銃過剰使用で罰せられた警官、アメリカの警察幹部ならどう対処する?」Hに尋ねると「無抵抗の相手に拳銃を抜いたら懲罰。相手が指示に逆らった場合、威嚇はもちろん発砲もお咎めなしだね。でなければ警官のなり手はいないよ」

折しもニッポンでは張り込み中の警官の目前で、多数の人が無差別に刺される殺傷事件が起きた。警官は全員丸腰だったという。正義の番人が武器なしで任務を全う出来るのか?ニッポンのワル共は、ちと過保護に過ぎはしないか?

(出典: デイリースポーツ 2008年4月3日)

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