総理、言い訳は不様ですぞ

「ニッポンは不思議な国だね。指導者たちは世界不況の波を目前にしながら、国民一人に200ドルずつ配ると決めたカネを自分たちも受け取るべきか否かを議会でクソ真面目に議論する。もっと大事な議題があるだろうに。もし仮にわがアメリカ議会で同じ議題が論じられたら『それは各個人の勝手。はい次の議題』で終わりだろう」日本のウラ事情を知りつくすアメリカンの友人が肩をすくめる。

「郵政の杜撰企画により毎年40億円の赤字を垂れ流しているホテルチェーンを、日本郵政会社が民間企業に売却処分すると決めたことに大株主の政府が口を出して中止させる。一体社長は何なんだ。長い間ジャパンウオッチャーをしてニッポン各界の神秘的不条理にも一定の法則を見つけたと思っていたが、最近の珍事連発にはボクも自信喪失したよ」

そんな会話をしながら衛星中継のNHKニュースを見ていると「郵政の民営化は竹中の仕業。オレは民営化には反対だった」と答弁する総理に二人そろって仰天した。「それはないよ。ミスター麻生は閣議で郵政民営化法案に賛成署名した閣僚だろ。反対なら大臣を辞任すべきだった。わが国のブッシュ政権の政策に沿えなかったパウエル国務長官は黙って辞任したぜ。ミスター麻生の祖父のミスター吉田が存命だったら、この不遜の孫をどう扱うだろうね」

一息いれると、友は「ミスター麻生の今度の発言は、不都合の責任は他人に転嫁し、自分の立場はウソで固めてでも護り貫くというニッポンの世相を象徴している。今度の総理の発言映像を観た世界は、日本のリーダーはご都合主義の卑怯者だったのかと失望するだろう」ニッポンびいきだからこそ、眉をひそめて危惧する。

総理は一国の指導者として絶対の禁句を公会の場で発した。苦しい言訳を重ねる御当人は、その行為の重大な意味が理解できていないようだ。

(出典: デイリースポーツ 2009年2月12日)

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