世代を超えて愛されてきたペコちゃん人形がアイドルの老舗菓子屋チェーンが、倒産しかけて大手のパン屋に吸収されようとしている。ことの起こりは使用期限のきれた原料を食品製造に使用したという内部告発が発端のようだ。事態が明るみにでると、テレビ、新聞、週刊誌は菓子屋のあれこれを異常な熱心さであげつらい世間の注目を集めた。しばらく閉業に追い込まれた菓子屋は、資金尽きて大手のパン屋の救済を受けるという。つい最近になって、当時、テレビの人気番組が報道した内部通報者からの情報が偽造であったことが明らかとなった。辛口の論評を売り物にする番組主宰者の人気タレントが、自らの番組の放映中に謝罪するというニッポン独特の決着をした。だが、これはアメリカのテレビでは絶対に見られないシーンである。
報道された出来事の一連の経過は依然闇の中。アメリカンの眼でみると腑に落ちぬことだらけだ。まず、この出来事には菓子屋から実害を受けたという被害者が存在しない。内規に反して製造された製品を食べて病気になった人間は居ない。ペコちゃんがアメリカに在住中なら、こんどの1件は社内問題で片付けられたことだろう。
アメリカだと、通告者からの密告のウラもとらずに報道したテレビ局は裁判で敗訴し、何十億円単位の賠償金の支払いを命ぜられたことであろう。巨額の罰金や法的報復が、弱肉強食のアメリカ社会では、弱者を護るための強い歯止めの作用をしている。
10年前、人気者の黒人女性タレントが挽肉製品の0157汚染問題について製造会社を番組で批判した。挽肉会社は直ちに訴訟に踏み切り、莫大な額の損害賠償金を手中にした。企業の責任者たるもの、株主、社員、そして顧客の利益を護る義務がある。謝罪の言葉などに惑わされず、受けた損害をきっちりと訴訟で取り戻すのがアメリカの経営者だ。
(出典: デイリースポーツ)